NISHIGUCHI KUTSUSHITAについて、
もっと知りたいという方にむけた読み物です。
目を閉じると、思い出す風景がある。そして、その風景から漂う雰囲気に加えて、ふと目にした「色」も私たちの記憶に強い印象を残していることに気づきます。その場所でしか出会えない「色」があるのだとしたら。「色」を紡いだ先には、ひとつの物語が生まれていくかもしれない。そんな想いから、シーズンカラーのストーリーを綴りました。今後、シーズンカラーのご紹介とともに、様々な街を舞台に、その街で出会った色とともに、物語をお届けしていきます。あなたの暮らしている街や、旅先の思い出にはどんな色がありましたか?
ある日、友達のルークが海辺でのバーベキューに誘ってくれて、ニューカッスルへ向かった。ニューカッスルは、シドニーから車で2時間ほどいったところに位置する。クラシカルな建物がつづく街並みの一方で、広々とした美しいビーチと海もある。そんなコントラストのある街だ。
バーベキューでは、はじめて会う人がたくさんいて緊張したけれど、みんなフランクであっという間に打ち解けた。新鮮なシーフードと分厚いステーキを堪能しながら、いっしょに飲んだワインがとても美味しかったので聞いてみると、ここから程近いハンター・バレーワイナリーのものらしい。酔い覚ましも兼ねて、ノビーズ・ビーチの脇にある遊歩道を散策してみた。歩く先に見えるのは、アイコン的存在ノビーズ・ヘッド。オーシャンエンドにある崖の上に建つ灯台が印象的で可愛い。
夕方、ふと、瞼を閉じたその瞬間に、海の色が、青から赤に変わった。そう、サンセットの瞬間だ。太陽が沈み、その色が海一面を染めていた。カメラを取り出そうとしたけど、なんだかもったいなく感じて、この目でしっかり眺めることにした。人は人生で、いったいこんな美しい風景にいくつ出会えるのだろう。1つずつこんな風景に出会うことが、世界の奥深さを知っていくことなのだと思った。
翌朝、ルークが笑顔で「はい!」と手渡したのは、チョコミルクとミートパイだ。オーストラリア人にとっての朝の定番だそうだ。さっそく、ミートパイをすこしかじって、チョコミルクを飲んでみる。ミートパイの濃厚な味わいと、チョコミルクの甘さでたちまち口の中はカオスな状態になり、日本人の私にはアメージングだ!やっぱり、まだまだ私の知らない世界がたくさんあることに気づいた。
ルークがミートパイを食べるときにはいつもこれがセットだった。味の好みはそれぞれあるけど、甘いものとしょっぱいものが合うのは確かだ。
オーストラリアのソウルフード。ドライブの途中にも、友人の家に宿泊したときにも、ふとした朝食にも。いろんなミートパイが私の思い出の写真には写っている。
空の青さを映すから海は青いのか。それとも海の青さを空が映すのか。そんな詩人のようなセリフも、ニューカッスルのビーチの前では自然に感じるから不思議。
海での楽しみは昼だけじゃない。海の近くにあるオープンテラスのあるバーへ行き、ビールを飲むのが楽しみだ。1杯目のビールはなんであんなに美味しいのだろう。
南半球最大の砂丘と言われるストックトン・ビーチの砂丘の中、4WDのバギーで走り回った。すごく揺れたけど、すごく笑ったことを覚えている。
遊歩道の周りを取り囲む海浜植物。生命力あふれる緑の色も好きだけど、黄色く小さな花が可愛い。
オーストラリアで最高のワインの産地の1つとも言われるハンター・バレー。有名ワイナリーから家族経営の小さなワイナリーまで訪れるたびに全部回りたくなる。
1974年の大嵐の際に座礁したMVシグナは、2016年に海に完全に沈むまで、ストックトン・ビーチのランドマーク的存在だった。青い海と赤褐色の姿は今も目に浮かぶ。
ノビーズビーチの夕暮れ時は、赤一色に染まる。近くに住むルークが言うには、この美しい景色は毎日表情が違うらしい。
冬の星空が好きだ。特に、夜のノビーズ・ビーチで寝転んで見た星は綺麗だった。夜が少し青いことを、ここで知ってから夜がまた好きになった。